マーケティングやビジネスに役立つ学問として世界的に注目を浴びている行動経済学。
本記事では、行動経済学のプロスペクト理論についてわかりやすく解説します。
「パッとわかるシリーズ」は、活字が苦手な人もパッわかりやすいように身近な例と図解で解説した記事になっています。
身近な例や活用する際の注意点も紹介するので、マーケティングに活かしたい方はぜひご覧ください。
具体的な活用法はどんなものがある?
プロスペクト理論を活用するときの注意点は?
プロスペクト理論とは
行動経済学とは、人が選択するときの心の動きを研究する学問のこと。
プロスペクト理論とは、行動経済学の基本的な理論です。この理論を提唱したダニエル・カーネマン(行動経済学の創始者のひとり)は、ノーベル賞を受賞しました。
人は数値だけで損得を判断しません。その時の感情や感覚も影響します。
この心の動きを理論化したのがプロスペクト理論です。
プロスペクト理論は行動経済学を学ぶ上でとても重要な考え方のひとつなので、覚えておきましょう。
ノーベル賞を受賞した理論?なんだか難しそう…
プロスペクト理論は身近にもたくさんありますよ。次の章からは具体的にどのようなものがあるかを見ていきましょう。
プロスペクト理論の具体例と活用法
プロスペクト理論には3つの心理作用があります。
この心理作用の影響により、人は不合理な行動をしてしまうのです。
心理作用とは、人の心の動きの傾向のことです。
本章では、プロスペクト理論の3つの心理作用と活用法について解説します。
- 損失回避性
- 参照点依存性
- 感応度逓減(ていげん)性
聞き慣れない言葉が出てきました。
できるだけわかりやすく教えてください。
読みにくい漢字がありますね。
でも、大丈夫ですよ。
3つの心理作用について、図や具体例を用いながら説明していきますね。
損失回避性
人は利益を得るよりも損失を回避する傾向があります。
これは、ダニエル・カーネマン&エイモス・トヴェルスキーによるコイントスの実験が有名です。
あなたも被験者になったつもりで一緒に考えてみてください。
ここに1枚のコインがあります。あなたはこのゲームに挑戦しますか?
この実験では、参加すれば50%の確率で2倍の200万円が手に入るにも関わらず、多くの人が確実に100万円を手に入れられる「参加しない」を選びました。100万円を失う状況を避けたいからです。
これは、損失回避性という心の性質によるものです。
人は得をしたときよりも損をした時の方が感情の振れ幅が大きいため、無意識に損を回避できる選択肢を選ぼうとします。
損失回避性はマーケティングにも応用できます。
以下は損失回避性を利用したキャッチコピーです。
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買おうかどうか迷っているときにこんなキャッチコピーを目にすると、つい買いたくなりますね!
参照点依存性
人は数値だけで判断するのではなく、他のものと比べて選びます。これを参照点依存性と呼びます。
参照点依存性の影響により、同じ価格でも元の数値によって「高い」と感じたり「安い」と感じたりするのです。
たとえば、「小麦粉の供給不足により800円のラーメンを1,000円に値上げします」と聞くと「200円も高い!しばらくラーメンは控えようかなぁ」と感じ、逆に「10周年記念で1,200円のラーメンを1,000円に値下げします!」と聞くと「200円も安い!お得だ!」と感じます。
本当だ!同じ1,000円のラーメンなのに、感じ方が違いますね。
マーケティングでは以下のような活用法があります。
・最初から適正価格のプランを提示するのではなく、まずは高い価格のプランを提示したあとに適正価格のプランを提示する。
・自社サイトのサービス紹介のページにライバル社と比較した競合他社比較表を提示する。(比較表に具体的な社名を記載するのはコンプライアンス違反になる可能性があるため、避けましょう)
同じ価格やサービスでも他と比較すると価値が変わるんですね。
人間の心理は不思議でおもしろいです!
感応度逓減(ていげん)性
感応度逓減(ていげん)性とは、同じ割引額でも元の価格が大きいとお得さを感じにくくなる現象のことです。
聞き慣れない言葉ですが、逓減(ていげん)は「数量がしだいにへること。また、しだいにへらすこと(引用元:小学館『デジタル大辞泉』)」を指します。
たとえば、以下の例ではどちらがお得に感じますか?
A:本日限り!298万円の車が500円引き!
B:本日限り!980円のハンバーグが500円引き!
同じ500円引きなのに、Bの方がお得に感じたのではないでしょうか。
以下は逆の例です。
A:298万円の車にプラス10万円でカーナビをつけられます!
B:980円のハンバーグにプラス1,500円で肉倍量+ご飯+サラダを追加できます!
10万円のカーナビより、1,500円の追加メニューの方が割高に感じませんか?
このように、マーケティングでは割引価格やオプション価格の設定に役立ちます。
プロスペクト理論をマーケティングに活用する際の注意
行動経済学はマーケティングに活用すると顧客の行動を促せるメリットがありますが、使い方を間違えると逆効果になります。
プロスペクト理論の活用する際には、「損をしたくない」と思わせることや競合他社との比較が効果的ですが、言葉選びに注意が必要です。
強いインパクトを与えようとするあまり、危機感を煽って不安にさせたり、騙したりするようなキャッチコピーは使わないようにしましょう。
プロスペクト理論により一時的に売り上げが上がっても、顧客が不満を抱えていればリピーターにつながりません。顧客の潜在的なニーズを引き出し、満足してもらえるようなアプローチをする姿勢が大切です。
「あの店は余計なものを買わされる」と思われて、悪い口コミが広まるかも…?
不要なものを無理に買わせるのは悪質な商法です。
「お得なものをよりお得に魅せて、喜んで買っていただく」など、顧客の立場に立って考えて活用しましょう。
「顧客の立場に立つ」は、マーケティングの基本ですね。理論に捉われすぎないように気をつけます。
まとめ:プロスペクト理論を活用して売上アップ!
本記事では、プロスペクト理論について図や具体例を用いて解説しました。
要約すると以下の通りです。
まとめ
、「行動を選ぶ際の心のクセ」を理論化したもの
プロスペクト理論を活用すると顧客の行動を促せる
不安を煽り、騙すことにつながらないよう言葉選びに気を付ける
プロスペクト理論は、行動経済学の基礎となる考え方です。
ダニエル・カーネマンやエイモス・トヴェルスキーらによる多くの実験により、人が損得だけで判断しないことがわかりました。
プロスペクト理論をマーケティングに活用すると、商材をより魅力的に魅せ、顧客の行動を促すことが可能です。
行動経済学を知り、売り上げアップや企業の成長に役立てましょう。
本記事では、プロスペクト理論を身近な例を使って解説しました。
プロスペクト理論を自社のホームページにも活用できるかなぁ。
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